第22章 きっかけ(瀬見 英太)
高校三年の初夏。俺は、バレー人生で初めての挫折というものを経験した。
不動だったレギュラーからの降格。
下剋上
という三文字熟語が頭に浮かんだ。
後輩の白布賢二郎に、ぴったりの言葉だ。
どうすればまた試合に出られるのか。
その日も教室で、窓からそよそよと流れてくる風を感じながら、そんなことばかり考えていた。
教壇では、季節外れの編入生が紹介されている。
「早川凪沙です。卒業まで一年もありませんが、よろしくお願いします。」
お辞儀をしてから教室を見回す彼女と、目が合う。
「瀬見くん……?」
「は?」
早川が、この町に帰ってきた。