第22章 きっかけ(瀬見 英太)
子供のころから俺は、スポーツだったら何でもできた。
野球、サッカー、水泳、空手……友達に誘われるまま、親に連れられるままに俺は何にでも手を出して、どこででもエース級に活躍した。
そんな俺が、バレーを始めたのは、小3のときに同じマンションに引っ越してきた女の子がきっかけだった。
偶然、クラスも同じになったのですぐに仲良くなった。
「瀬見くん、バレーしようよ。」
彼女の誘いに、俺はいつものように気軽に応じた。
それが、俺の人生を大きく変えるとも知らずに……。
それからの俺は、ずっとバレーボールに夢中だった。
「瀬見くん、セッターやりなよ。」
本当はスパイク打つ方が楽しかった俺は、セッターにはあまり興味がなかった。
「セッターが一番かっこいいんだよ。瀬見くんかっこいいから、セッター似合うよ。」
そんな言葉にのせられるなんて、我ながら現金だなとは思う。
でも、今なら分かる。
俺は、彼女のことが好きだったんだ。
俺を初めてバレーに誘ってくれて、セッターの楽しさを教えてくれた女の子は、小5の終わりにまたどこかへ引っ越して行ってしまった。