第21章 affettuoso(孤爪 研磨)
カチャリと扉の開く音と人の気配に、おれは目を覚ます。
しまった、寝すぎた…。
二度寝したことを少しだけ後悔しながら、次に起こるであろう出来事に備えて掛布団の端をぎゅっと掴む。
「研磨、起きろ。朝練遅れるぞ。」
ベッドのそばまで歩いてきて、クロがそう告げる。
「……起きてる。すぐ準備するから下で待ってて。」
横になったまま返事をするも、クロは納得するわけもなく布団をはがそうと手を伸ばす。
「あ、待って、クロ。やめて。」
「は?なんだよ。」
「えっと……。」
返事に詰まったおれに、何かを確信したクロは力ずくで布団をめくった。
ああ、最悪……。
「ん~……さむい……。」
凪沙がムニャムニャと手探りでおれにすり寄る。
クロはため息をついてから、彼女の身体をひょいと起き上がらせた。
「こら。」
「あ、クロ。おはようー。」
呆れているクロに、凪沙は伸びをしながら返事をした。
本当にネコみたいだな、と俺は他人事のようにそれを眺めた。