第18章 何度目の青空か(木兎 光太郎)
(まじかよ……。)
重い足取りで目的地もなく彷徨っていたら、たどり着いたのは、あの堤防のある海だった。
「まじかよー……。」
何度も心の中で廻った言葉を、声に出すが、あっさりと波の音に浚われてしまう。
(会いに行くって言ったじゃんか。待ってるって約束したじゃんか。クソ!)
堤防を蹴とばすと、ローファーの先に傷がついて、やべ、と漏らす。
「俺が遅かったんだよな。ごめんな、ナギ……。じいちゃんもごめん。」
堤防に上って、顔を上げる。目の前にひろがる、海と空。
(あの日と同じ……。)
すうっと息を胸に吸い込む。潮の香りが懐かしかった。
鞄を投げ出して、砂浜に降り立つ。靴に砂が入るのも、制服が汚れるのも構わずに木兎は海へと全力で走った。
言葉にならない、奇声とも叫びとも取れる声を上げながら、誰もいない海へ。空へ。
肩で息をしながら、木兎は思い出す。
彼女との約束は、もう一つあったということを……。