第18章 何度目の青空か(木兎 光太郎)
それから2年弱。木兎は結局一度もあの町には行けていない。もちろん、早川とも会っていない。
携帯を持っていない彼女とは、連絡先の交換もしなかった。
木兎のメールアドレスを早川に渡してあったが、それが彼女のメールを受信することはなかった。
(ナギ、元気かな……。じいちゃんも。)
電車に揺られながら、木兎はスマホをいじる。
乗り換え案内によると、今から向かえば夜遅くには東京に戻ってこられる。
夕飯はいらない、と親にメールを送って、所持金を確認する。
(チャージの残もあるし。うん、大丈夫。)
大きく息を吐いて、目を閉じる。
ぎゅっと拳を握ると、湿布を貼った指に鈍い痛みを感じた。