第18章 何度目の青空か(木兎 光太郎)
洗面所で顔を洗って、寝癖を直して、店に入る。
「おっせーぞ!ほら、はやくはやく!!」
木兎に手招きされて、早川は隣に立つ。
「背景何色にする?」
早川がそう聞くと、木兎は即答する。
「あお!空の色がいい!」
色とりどりの背景色がロールカーテン状になっている。その中から、
空色の紐を引っ張ると鮮やかなスカイブルーが降りてきた。
「小道具は……いらないな。二人並んで立て。光太郎はブレザーのボタン閉めろ。凪沙は足とじろ。」
カメラを構えた祖父の指示に二人は従う。
その時ばかりは木兎のおしゃべりも止まる。
繰り返されるフラッシュとシャッター音を浴びながら、
「木兎、入学おめでとう。」
隣にいる木兎にだけ聞こえる大きさで早川はつぶやいた。
「え?」
「本当の入学のときには言えないから。今言っとく。」
少し鼻声になっていることに、木兎は気付いただろうか。
「おう。ナギも、入学おめでとう。あと、新しい制服すっげー似合ってる。かわいい!」
その大きな目を細めて、木兎は笑顔を向けた。
早川もつられて頬が緩んだ。