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【ハイキュー】短編中編つめあわせ

第18章 何度目の青空か(木兎 光太郎)


「凪沙、光太郎の引っ越し、見送りに行かなくて良いのか?」

卒業式の次の日。木兎家の引っ越しの日の朝、凪沙は布団の中から出られなかった。

見かねた祖父が声を掛けても起きようとはしない。

「んー……。」

やれやれ、とため息をついていたら、

「おーい!ナギ!!」

自宅とつながる写真館の入り口から声が響いた。

「木兎!?」

それに反応して、早川はガバっと起き上がる。

「なんだよ、まさかまだ寝てんのかー?」

ドタドタと足音をさせながら、木兎は早川の部屋までやってきた。

「光太郎、おはよう。」

「じいちゃんおはよー。ナギ起こしていい?」

「おう。」

祖父の了承を得て、木兎は遠慮なく早川の部屋に足を踏み入れた。

「なんだよ、寝癖ボサボサじゃん。」

木兎は不満そうな声を出す。

「木兎、それ……。」

「おう。昨日帰ったら届いてたから。どう!?似合う!?」

木兎は真新しい梟谷学園の制服を着ていた。

少しだけ大き目のサイズなのは、これから背が伸びることを見越してのことだろう。

見慣れた学ランとはちがうだけで、こんなにも大人っぽくなってしまうのかと、早川は驚いた。

わざわざこれを見せに来たのだろうか。

「う、うん……似合ってる。よ……。」

早川が答えると、木兎は何か思いついたようにそばにいた彼に詰め寄る。

「じいちゃん!写真撮って!俺あんま時間ない。昼までに帰んないと母ちゃんに怒られちゃう。」

「おう。光太郎の晴れ姿だもんなあ。しっかり撮ってやるよ。」

「やったー!ほら、ナギも早く準備しろよ!」

「え、私も?」

「俺だけ撮ってどうすんだよ。一緒に撮るの。ナギも高校の制服もう出来てるだろ?」

木兎の勢いに流されるまま、早川は新しいセーラー服を押し入れから取り出す。

「着替えるから、先に店行ってて。」

男二人を部屋から追い出してから、早川はセーラー服に腕を通した。

まだ慣れないスカーフを丁寧に結んで、スカート丈を念入りに調整しながら、早川はこぼれる涙を拭った。

(最後なんだから…泣いちゃだめ。困らせるだけ。)

ぎゅっと唇を噛んで、涙を引っ込める。
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