第18章 何度目の青空か(木兎 光太郎)
「いつだっけ。引越し。」
傷口に絆創膏を貼り付けて、木兎の腕を開放すると、サンキュー、と礼が返ってくる。
「卒業式の次の日。春休みから練習あるからな。」
「そっか。いよいよだね。」
「楽しみだなー!俺、絶対超スゲー選手になる!!」
そう意気込む木兎の目はキラキラとしていて、幼い早川をバレーに誘った日のそれと少しも変わっていない。
早川は寂しさを押し殺して、笑顔を向ける。
「木兎ならきっとなれるよ。だって木兎のスパイク、高校生だって取れないじゃん。」
早川の言うとおり、木兎は、地元では高校生相手でも負けなしだった。
その才能に気付いた教師の一人が、梟谷学園に伝手があり、話を持ちかけてくれたらしい。
早川にとっても、木兎の才能が認められたことはとても誇らしい。
けれど、ほんの少しだけ、その教師を恨む気持ちがあったのも事実だった。
「サイン、今のうちにしといてやろうか!」
「えーいらない。調子乗らないでよ。」
早川がつれない返事をする。
「なんだよー。あ、じゃあ有名になったら一番にここの写真館にサイン書きに来る!」
じいちゃん、いいだろ?と声をかけると、
「それは楽しみだなあ。」
と、本当に嬉しそうな彼の笑顔が返ってきて、木兎は満足そうに頷いた。