第18章 何度目の青空か(木兎 光太郎)
明るくて裏表のない木兎の周りにはいつも人が集まってきた。
そんな彼がそばにいたおかげで早川もよそ者扱いされずに溶け込むことができたのだ。
早川は、両親を事故で亡くしたため、田舎で写真館を営む祖父に引き取られた。
家族を亡くした寂しさ、慣れない土地での生活。祖父は優しかったけれど、やはり寂しかった。
だから、近所の木兎が遊びに来るとにぎやかになるのが嬉しかった。
「光太郎が来ると、凪沙が元気になるなあ。」
早川の祖父のその言葉をきっかけに、木兎は足しげく彼女の家に通った。
擦りむいた腕に消毒液を吹き付けると、木兎は大げさに痛がった。
「いてててて!もうちょっと優しくして。じいちゃーん!ナギが乱暴する!!」
居間から叫ぶと、隣の部屋にいた早川の祖父は顔を出した。
「なんだ、光太郎はまたケンカしたのか。」
あきれ顔をする彼に、木兎は言い訳をする。
「向こうが先に手出したんだからな!俺は悪くない。」
動かないで、と早川に注意されて、木兎は口をつぐむ。
「うるさいなー。ケンカやめなよ。せっかく東京にスポーツ推薦決まったんでしょ。
問題起こすと取り消されちゃうよ。」
「おう。そうだな。もうしない!」
いつもの通り、調子のいい返事に早川は苦笑する。
中三の3月。木兎はバレーボールの才能を買われて、東京の強豪校への入学が決まっていた。
それを機に木兎家は家族そろって東京へ引越すことになっている。
早川は地元の公立校へ進学する。高校からはバラバラだ。