第18章 何度目の青空か(木兎 光太郎)
「じゃあな。」
木兎が帰ろうとして床に無造作に置いてあったブレザーを持ち上げた時、何かがハラリと宙を舞った。
「木兎さん、何か落としましたよ。」
1年の赤葦がそれを拾い上げる。
「なに、写真?」
木葉が赤葦の手元を覗き込む。
角はすっかりよれよれに折れ曲がっていて、おそらくここ最近の物ではない写真。
そこには木兎と、一人の少女が写っていた。
木兎は梟谷の制服を着ているが、今より少し顔つきが幼い。
少女も恐らく歳は同じくらいで、この辺では見たことのないセーラー服を身に付けている。
二人並んで立っているそれは、背景が綺麗なブルー一色で、きちんとしたスタジオで撮られたものだと分かる。
「あっぶね。なくすとこだった!」
赤葦の手からそれを取って、シワを伸ばすように手で撫でつけた。
「大事なものならブレザーなんかに入れとくなよ。財布にでもしまっとけ。」
猿杙に指摘されて木兎は、その手があったか!と鞄から財布を取り出して写真を入れた。
「その子だれ?」
木葉が無遠慮に問うと、木兎は
「中学まで一緒だった子。」
とだけ答えた。
「じゃあな。」
今度こそ木兎は部室から出て行った。
残されたメンバーは、木兎の意外な一面を見てしまったような気がして皆微妙な表情をしていた。
「木葉さん、木兎さんって確か……。」
赤葦が確認するように木葉を見る。
「ああ。梟谷学園入学と同時に上京してるから、もともとは東京の人じゃないよ。」