第16章 告白(山口 忠)
「私は山口の方が断然タイプだけどなー……。」
早川が小さな声でつぶやいた。
あんまり小さな声なもんだから、俺は自分の耳を疑った。
都合のいい聞き間違いでもしたのかと。
「え……。」
「山口も、高校でモテてるでしょー。」
「まさか。俺なんて全然だよ。」
手のひらを顔の前でふって、ないない、と否定する。
「分かってないなー。中学のとき、山口のこと好きだった子何人か知ってるよ私。」
「いやいや、今更そんな……。何かの間違いでしょ。」
「間違いじゃないんだな、それが。」
早川がぴたりと足を止めた。
俺もつられて立ち止まる。
「だって私が山口のこと好きだもん。」
「え……。」
早川が、俺のことを、好き?
あまりにも突然のことに俺は完全に思考が固まってしまった。
「まあ、フラれるのが怖くて言えなかったけどさ。
高校で別々なってから、当然だけど塾以外では会えないし、試合も見に来るなって言うし。
月島君は来ればって言ってくれるのに。」
「え、ツッキーと話したの?」
「メールでね。ねえ、私フラれちゃうの?やっぱり同じ高校に好きな子でもいる?」
早川は俺のことを見上げてくる。なんでそんなに落ち着いてるんだろう。
「え、えと……俺も、早川のことが、好き。です。」
しどろもどろに俺がそう告げると、早川は飛び跳ねて喜んだ。
「やったあ。嬉しい!月島君の言った通りだった!」
ツッキー何言ったの……。
「私が中学の時から山口のことを好きなの、月島君にはばれてたんだよね。
協力してって頼んだけど、めんどくさいからヤダって断られて。
でも、多分砕けることはないから当たってみたらって。あと、もたもたしてたら山口が他に目移りしちゃうかもよって脅された。」
笑いながら説明するのを、俺は黙って聞いた。
「ツッキー俺には何も言ってこなかったのに。ていうか目移りとか……しないし。」