第16章 告白(山口 忠)
はあ、とため息をついた俺の袖を、早川が引っ張った。
「なに?」
「試合、見に行ってもいい?」
早川がもう一度さっきの質問をしてきた。
「俺控えだから、多分出れないよ。あ、でもツッキー出るよ。それでもよければ……。」
今度は正直に答える。
「それでもいいよ。今回だけじゃないもん。これから3年間たくさん試合するでしょ。私、次もその次も見に行くから。
だって山口が練習がんばってるの知ってるもん。試合出たいから頑張ってるんでしょ。
私は、そんな山口のことを応援がしたいの。」
早川は顔を少し赤くしながら言い切った。
俺は、そんな彼女がかわいいのと、うれしいのと、はずかしいのとで胸がいっぱいになる。
「うん。見に来て。」
それだけ答えると、彼女は大きく頷いた。
まだ一年の春だ。まだまだこれから、時間はたくさんある。
俺は、これからもっともっと頑張って、ツッキーと一緒にコートに立ちたい。
そして、彼女にその姿を見てもらいたい。
そう思った。
「告白」Fin.