第15章 そんなふたり(岩泉 一)
「で?一体この茶番は誰が首謀者なの。」
病室を出て、松川はそう切り出した。
「え。ばれてた?」
及川はテヘヘと舌を出してふざけた顔をする。
「だって花巻、俺の背中に隠れて笑ってんだもん。そりゃばれるって。」
「ちょっとおぉぉぉ!マッキーだめじゃん。」
及川がプンプンと怒って見せるが、花巻は悪びれもせずに言い返す。
「まあいいじゃん。岩泉は気付いてなかったっぽいし。
うまいこと二人残してこれたし。あとは早川がうまくやるだろ。」
「確かに。凪沙ちゃん演技上手だったねー。及川さんびっくりしちゃった。」
「いやいや、お前もなかなかのタヌキだったぞ。」
花巻はもう一度盛大に思い出し笑いをした。
「なんでこんなめんどくさいことしてんの。」
談話室に戻ってから、松川が改めて聞いてみる。
「凪沙ちゃんがさ、岩ちゃんから好きって言われたことないって言うんだもん。」
「あー、岩泉は確かに言わなそうだな。」
松川は椅子に座って足を組んだ。
「心配になっちゃったんだと。岩泉は、及川ほどじゃないにしてもモテるわけだし。」
それでこの作戦を考えたわけ、と花巻が説明をする。
「岩ちゃん素直じゃないけど、男前だから。こういう状況ならバシっと言うと思うんだよねー。」
及川が楽しそうに笑う。
「あーでもさあ、これ後で岩泉すんげー怒るぞ?及川覚悟しといたほうがいいな。」
クククっと松川が笑いをこらえて及川を見る。
「ええ!?俺だけ怒られるの!?やだよー二人も一緒に謝って~。」
「やーだね。」
「断る。」