第15章 そんなふたり(岩泉 一)
「あれ、花巻もいんじゃん。」
よう、と手を振る花巻。
「マッキーはずっと俺と一緒だったの。」
「で、凪沙になにがあったんだよ。早く病室行かせろ。」
岩泉はさすがにイライラして、及川に詰め寄る。
「それがね、俺とマッキーが今朝一緒に凪沙ちゃんのお見舞いに来たら……記憶喪失になってたんだ。
もうね、なーんにも覚えてないの。」
及川は神妙な面持ちで説明した。ね、マッキー、と花巻に向かって同意を求めると、彼も頷いた。
「いやいや、どうしてそうなるんだよ。だってあいつ盲腸だったんだろ!?」
岩泉は声を荒げた。落ち着けって、と松川は彼の肩に手を乗せるが、その表情も動揺を示している。
「俺だって詳しいことは分からないよ。
でもとにかく手術の時の麻酔の影響じゃないかってお医者さんは言ってたんだけど……。」
「さっきまでMRIとか詳しい検査を一通りしてて、今は御両親が医者から詳しい説明されてるところ。」
及川と花巻が代わる代わる説明をする。
岩泉と松川は、まだ信じられないといった顔をしている。
「何がきっかけで記憶が戻るか分からないっていうから、みんなに会えば何か思い出すかもって思って、
二人にも来てもらったんだ。」
「あいつは今はどこにいるんだ。」
「……病室にいるよ。」
及川のその返事を聞いて、岩泉は踵を返して病室へ向かった。
他の三人も彼に続いて歩きだした。