第14章 魔法をあげる(西谷 夕)
休憩中、校庭の端の水道でみんなが顔を洗っていた時、澤村が声を上げた。
「おー、女子帰ってきたかー。お疲れ!どうだった?」
男子部員がなんだなんだ、と視線をそちらに向ける。
「澤村。負けちゃった……。まだまだだね。これからまた練習するんだ。」
「そうか、また次がんばれよ。」
道宮と澤村が仲よさそうに話しているのを横目に、田中が気づいたことを口にする。
「あれ、早川はいないんですか?」
「え?さっきまでいたんだけど……どこいっちゃったんだろ。」
道宮がキョロキョロするが、彼女の姿は見当たらなかった。
「どうせどこかでいじけてるんですよ。昔からそうなんです。」
西谷がため息をついて、道宮に聞いた。
「あいつ、どうでした?」
「凪沙ちゃん?うーん、もう少しいつもどおりできたら良かったんだけど……。」
道宮の苦笑いを見て、西谷はやっぱり、と呆れた表情になる。
「西谷は幼馴染に厳しいな。」
「凪沙ちゃんだって頑張ってたんだよ。」
澤村と道宮がさりげなくフォローするが、逆効果だったようで
「大地さんも道宮先輩も甘いですよ。
あいつ、へたくその癖に、いっちょまえに緊張なんてするからダメなんです。
どうせ一人で焦ってミス連発したんでしょう。簡単に想像できます。」
ふんっと鼻息荒く西谷は言い終えてから、
「大地さん、俺ちょっと行ってきます。休憩終わるまでには戻るんで。」
そう澤村に告げて、西谷は近くに置いてあったタオルを手にして走り出した。