第13章 とうふの日(菅原&岩泉)
「岩泉はさー、就活の準備ってしてる?」
一通り料理を食べ終えて、何杯目かのお酒をちびちびと飲みながら菅原は聞いた。
「んー、準備っていうか、どういう仕事しようかなっていうのはぼんやりと考えてはいる。」
少し顔の赤い菅原に、大丈夫か?と声をかけると、
へーき、とあまり呂律の回らない返事が返ってきたので、彼のために水を頼んでやる。
「そうだよなあ。来年の今頃には内定出てるのかなー。
なんか全然想像できないや。」
菅原は頬杖をついて、焦点の合わない目でテーブルの上をぼんやりと眺める。
「菅原は、やりたい仕事とかあんのか。」
「一応、考えてるのはいくつかあるけど、適正とかもあるしさ。
あと、やっぱり東京いくかどうかとかさ……。」
「あー、確かに。俺もそれは悩む。
やっぱり求人数は東京が圧倒的だしな。
しかもどうせ転勤ある仕事だったらどこに行くか分かんねえしな。」
店員が持ってきた水を、菅原の目の前に置く。
「そうそう。ほんと、全然先が見えないよなー。」
「院は考えないのか?菅原の成績だったらいけるだろ。」
ほら、水飲め、と促されて、彼はようやくそれに手を伸ばす。