第13章 とうふの日(菅原&岩泉)
「実はそれも悩んでる。
でも文系で院行って、就職有利になるって聞かないしなー。」
「就活のために院行くわけじゃねえだろ。」
「確かに。でもこれ以上親にお金出してもらうのも気が引けるし、院行くとしたら自力で行きたい。」
「院からでも奨学金って取れるぞ確か。」
「あーそっか。そういう手もあるか。」
少し黙ってから、菅原はふっと息を吐いて、小さく笑った。
「どうした?具合悪いか?」
「いや、そうじゃなくて。なんかおかしいなーって思って。」
「なにが。」
水を少し飲んでから、菅原は口を開く。
やはり酔っているらしく、ぼうっとした表情だ。
「高校の時はさ、こんな風に岩泉と仲良くなって酒飲んでるなんて想像もしてなかったから。
不思議なもんだなーって思って。
きっとまた何年かして、ふとした瞬間に、
大学生のときの俺はこんなこと想像してなかったんだろうなーって思いながらまた色々考えてんのかなって。
あれ?俺なんか変なこと言ってる?意味わかる?」
「ああ、なんとなく分かる。」
岩泉は静かに頷く。
「今度さ、及川帰ってきたら教えてよ。一緒に飲もうよ。
大地と旭も誘うからさ。そんで今日みたいに、くだらない話したり、高校の思い出に浸ったり、就活の話したりしようよ。
なんかすげー楽しそうじゃねえ?」
相変わらず少し赤い顔で幸せそうに菅原が笑って言うので、
岩泉はそうだな、と返事をしながらも、ついつられて小さく笑った。
「とうふの日」Fin.