第13章 とうふの日(菅原&岩泉)
「付き合ってながいんだろ?ケンカとかしねえの?」
「もうすぐ3年かなー。幼馴染だから元々の付き合いはもっと長いけど。ケンカは、この前した。」
あっちち、と言いながら麻婆豆腐を口に運ぶ。
「は?めずらしいな。何があった?」
岩泉は箸で器用に揚げ出し豆腐を食べる。
「それがさー、ナギの奴、デパ地下でバイトしてんだけどさ、
客から連絡先とかもらってんの。
そんなの無視すりゃいいのにさー、律儀にLINEやりとりしてて。
そんでさ、映画一緒に行こうとしてんの。
バカじゃねえの、下心ありありなの気付けっつーの。
なんでそんな奴と行くんだよって問い詰めたら、
こうちゃん、こんなファンタジーの映画興味ないと思って。
だとさ。確かに興味ねえけどさ、そんなのその男だって興味ないに決まってんじゃん。
そいつが興味あるのは映画じゃなくて、お前なの。
もっと言えば、お前とイヤらしいことすることに全部の興味を注いでるの!
って電車の中で力説したら、怒られた。」
「そりゃ菅原が正論だけど、彼女が怒るのも当然だな。」
「まあ、その後ちゃんと仲直りはしたけど。
ついでにLINEの相手にも『彼氏いるんで映画は無理です』ってきっぱり断らせたけど。」
シークワーサーサワーが空になって、菅原はハイボールを注文した。
岩泉はついでに麦焼酎のロックをオーダーする。