第2章 ハッピーアンブレラ (日向 翔陽)
「どうかした?」
彼女の視線を追うと、そこには同じクラスの男女のカップルがいた。
日向たちと同様、一つの傘に肩を寄せて歩いている。
彼らはクラスでも公認のカップルで、仲がいい二人だ。
今更驚くようなこともない。
「あの二人仲良いよなー。青春ってかんじ。」
そう呟いてから、俺は恥ずかしくなって言い訳を始める。
「あ!でも別に羨ましいとかじゃなくて!俺はそう言うの苦手だし。
今はバレーが一番楽しいし……」
早川はプッと吹き出す。
「なに焦ってんの。」
「いや、別に焦ってるわけじゃないけど……。」
俺、今絶対顔赤いと思う。やだなかっこ悪い。
早川は再び歩き出して口を開いた。
「でも、私もそういうのちょっと苦手だから日向の気持ち分かるかも。
好きな人と相合傘とかさ、恥ずかしくて、むりむり。」
彼女のその言葉に、胸がチクリと痛んだ。
「日向はさ、男の子って感じがあんまりしないから全然大丈夫なんだけどなー。」
あー、そうか。だから俺のことは簡単に傘に入れてくれたり、こんなにくっついて笑顔を見せてくれたりするんだな。
俺はそうだねと笑顔を作って同意するしかなかった。
「あ、バスちょうど来た!」
交差点から曲がってくるバスを見つけて、
俺は早川の手に傘を持たせて数メートル先のバス停へと走り出した。
この空気と、胸の痛みと、彼女から逃げるように。
「ありがとな!また明日!!」
「うん!気を付けてね!!ばいばい」
俺たちは手を振って別れた。
俺の心臓はまだドキドキしていた。
女の子といてこんな気持ちになったのは初めてだ。