第2章 ハッピーアンブレラ (日向 翔陽)
二人で雨の中に足を踏み出す。
「傘、俺が持つよ。」
「ありがと。」
近づくと、早川は俺よりも数センチだが目の位置が低く、
肩も首も細いことに気付く。
やっぱり女の子なんだなと思うと、少し頬が熱くなるのを感じた。
彼女の肩がぬれないよう、そっと傘をそちらに傾ける。
「今日は自転車じゃないんだね。」
「うん。パンクしちゃってさー。
昼のうちに母さんが修理屋さんに持ってくって言ってたけど。
今日は傘も持ってないのに雨降るし、ついてないんだよ俺。」
「そっかー。大変だったね。
でも私が通りかかってラッキーだったじゃん。
日向が雨にぬれずに済んでよかった。」
早川は明るい声でそう言って見上げた。
至近距離での笑顔に、ドキドキする。
「あ。」
早川が立ち止まって道の向こうを見つめた。