第12章 裏路地のうさぎ(福永 招平)
ナギと俺は、数か月前にネットで知り合った。
暇つぶしで音楽関連のSNSを眺めていたときのこと。
そこではみんなひたすらお勧めのライブ動画やMVのURLを張り付けていたんだけど、
そのなかで俺と趣味がものすごく似ている奴がいた。
それがナギだった。
俺はSNSではほとんど誰かと交流しないんだけど、その時は珍しくメッセージを送ってみた。
向こうも俺と同じ高2だと知って、余計に親近感が湧いて、どんどん話は弾んだ。
アジカンいいよね、ライブいったことある?俺はまだ行ったことない。
へー大田区に住んでるんだ、ちょっと近いね。
え、引っ越してきたばっかりなの?前はどこにいたの。
鹿児島県かぁ、俺行ったことないけどどんなとこなの……。
実は俺は結構長い間、ナギのことを男だと思っていた。
アジカンって女の子に人気があるとも思えなかったし、
他の音楽の趣味も、
くるりとかELLEGARDENとかACIDMANとか、ちょっと渋すぎというか女子高生が好むものじゃないよな
っていうものばっかりだったから。
SNSの登録名も「ナギ」だけで、男か女かイマイチよくわかんなかったし。
だから、ホントに何気なく
「ナギは彼女とかいないの」
ってメッセしたとき
「いや、私女だしw」
って返ってきたときにはひたすら謝るしかなかった。
まあ彼女はそんなことは全然気にしてないようだったけど。