第11章 Sunny Sunday(黒尾 鉄朗)
数駅進んで、ますます人は増えてきた。
この満員電車に乗じて、さっきから足の間を触られている。
(痴漢だよなあ。やだなあ。)
鉄朗に助けを求めて視線を送っているが、
さっきよりますます遠くまで押し込まれてしまって、気付いてもらえない。
身をよじったりきょろきょろ振りかえったりして何とかやり過ごそうとするが、なかなかその手は離れなかった。
(しつこい……。)
不快感と苛立ちが募ってくる。
騒ぎになるのも嫌なので声を上げる勇気もない。
少しずつその手の位置は上にあがってきて、ついにスカートの中まで入りこんできた。
(助けて。)
唇を噛んで鉄朗の立つ方を見た。
すると、ちょうどこっちを向いた彼と目が合う。
一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに血相を変えてこっちに向かおうとしてくれる。
人をかき分けて、ようやく近くまでたどり着いて、私の手を引く。
「おい、降りるぞ。」
「え……。」
「いいから。」
次に停車した駅で降ろされた。
ホームの端まで連れて行かれる。