第11章 Sunny Sunday(黒尾 鉄朗)
電車が来て、乗り込む。結構な混みようだ。
「あ……。」
人の波にのまれて、私と鉄朗は別の方向へ流されてしまう。
いつもなら、私の手を取って離れないようにしてくれるのに。
今日はそれもなく、鉄朗は座席の上の網棚のパイプを掴んでいる。
背が高いから、いつもつり革よりも高い位置のあそこをに手を置く。
その仕草が私は好きだ。
遠目にもかっこいいなあと思う。
あのヘンテコな髪型をどうにかしたいけれど、
でもそうしたらきっとモテてモテて仕方ないだろうなと思うので、
まああのままでもいいか。
人を押しのけて鉄朗のところに行く気にもなれず、私は大人しく近くのつり革に手をかけた。
このまま、いつのまにか鉄朗が帰ってしまうんじゃないかと不安になって、チラチラと様子をうかがう。
携帯をいじりながら電車に揺られる姿を見てほっとする。
行く場所は決まっているのだから、駅で降りてから合流すればいいか。
そしたらちゃんと仲直りしよう。
私は気を取り直して、窓の外に目を向けた。