第10章 きまぐれロマンティック(月島 蛍)
後ろから胸に回されていた彼女の腕を掴んで逃がさないようにしてから、一気に彼女の方を向く。
「凪沙……。」
「なあに?」
名前を呼ぶと、無邪気な声で返事をする。
凪沙が自分で色んなことを理解するまで待つつもりだったけど、
ちょっと限界。少し強引にでも分からせてあげるのも悪くないよね。
布団をかぶったままなので彼女の表情は分からないけど、
きっと僕が何をしようとしているかなんて想像もしていないんだろうな。
「凪沙、ちょっとじっとしててよ。」
僕は少し低い声を出してそう伝えた。
「蛍君?」
腕を伸ばして、彼女の背中を引き寄せる。
「ふふ……くすぐったい。」
「じっとしててって言ったでしょ。」
凪沙の顔に触れて、手探りで唇を確認し、自分のそれをゆっくりと近づける。