第10章 きまぐれロマンティック(月島 蛍)
凪沙は全然分かってない。
僕がその気になれば、細くて小さい凪沙のことなんてどうとでもできるのに。
警戒心も危機感もゼロだ。
僕は凪沙のことが好きだ。だから兄ちゃんのところに行かれるのも困る。
もう少し凪沙が恋愛に興味をもったり、女としての自覚が出てきたら僕のものにしてやろうと企んでるんだけど、
そんな日はなかなかやってこない。
いつまでたっても凪沙はマイペースだ。
「ねえ蛍君」
彼女に名前を呼ばれて、顔を上げると、視界が真っ暗になった。
「がおー!」
凪沙がふざけて布団を僕の頭にかぶせてきたのだ。
「な……ちょっと、やめてよ!」
「あははっ」
勢いよく凪沙に体重をかけられて、僕はベッドに倒れこむ。
起き上がろうとする僕と、おさえこもうとする凪沙で揉みあっていたら、彼女はさっきのようにもぐりこんできた。
「捕まえたー!」
真っ暗な布団の中で後ろからぎゅうっと抱きしめられて、僕は身動きが取れなくなる。
いや、振り払おうとすれば力で勝てないわけがないんだ。
でも僕はそうしなかった。
背中に彼女の体温と、女性のやわらかなふくらみを感じつつ、なんとか理性を保つ努力をする。
「蛍君、やっぱり男の子だね。細いのに肩ががっしりしてる。」
耳元でそうささやかれれば、僕の我慢は限界に達した。