第9章 ここにいる理由③(黒尾&孤爪)
「何してんだ?そんなとこで。」
「三日月、すごいキレイ。」
彼女にそう言われて、黒尾もベランダへ出た。
「おーほんとだ。ほっそいなー。」
並んで夜空を見上げる。
「でも明るい。」
早川は手を伸ばして、月にかざした。
「クロ、ありがとう。いろいろと。」
彼女がぽつりと言う。
「良かったよほんと。よさそうなとこに決まって。
一時期血迷ってコルセンの求人拾ってきたときにはどうなるかと思ったけど。」
黒尾が思い出し笑いをする。
「あんなのこそコミュ障にはハードル高すぎだっつーの。
研磨も呆れてたな。」
「もう、そのことは忘れて。」
早川が軽く黒尾の肩に拳を入れる。
「ナギも元気になったことだし、ほんとによかったよ。」
「うん。ありがとう。」
早川は笑顔で彼を見上げた。
「そういえば研磨。例の後輩の女の子のことフッたみたいだな。」
思い出したように黒尾が口を開いた。