第9章 ここにいる理由③(黒尾&孤爪)
----数か月後----
「ただいまー!聞いて聞いて、内定でた!」
「ナギうるさい。」
家に入るなりバタバタとリビングに駆け込んだ早川に、
孤爪はいつもの台詞を吐いた。
「マジか!よくやったなナギ。おめでとう。」
黒尾がキッチンから声をかける。
「何の仕事だっけ?」
孤爪がテレビを消して寄ってきた。
「法律事務所の事務員。クロが見つけて来てくれたやつ。」
「あー。あれに決まったのか。
お前法学部だったからどうかなと思った程度だったんだけどな。」
「正直私もすごい驚いた。
最初はとにかく勉強ばっかりみたいだから、
それに耐えられるかが勝負って言われたけど、勉強すごい楽しい。」
彼女は目を輝かせて分厚いテキストを取り出して見せた。
「あー、間違いなくお前向きだわ。」
黒尾は苦笑いをして包丁を動かす。
「うわ、なにこれ俺こんなの1ページも読めない。」
パラパラとそれを眺めて孤爪がげんなりする。
「何言ってんの研磨だってプログラミング用語?
みたいなの扱ってるじゃん。あれの方が意味不明。」
「あれにはちゃんと意味があるし。」
「これだってあるし。」
「お前らなに張り合ってんの。ほら飯できるぞー。
ナギは手洗ってきなさい。」
黒尾に促されて二人は食卓の準備に取り掛かった。