第9章 ここにいる理由③(黒尾&孤爪)
「あれ?起きてたんだ……。」
日付が変わってようやく、孤爪は帰ってきた。
「おかえり。お疲れさまだったね。」
「ほんと。くたくた。最悪……。」
孤爪は文句を言いながらドサッとソファに倒れこんだ。
(うわ、ホントに酔ってる。珍しい……。)
身体から漂うお酒の匂いと、少し赤い顔がそれを物語っていた。
「お水持ってくる。」
「んー……。クロは?」
「お風呂。」
孤爪はのろのろと起き上がって、渡された水を飲んだ。
「後輩、大丈夫だった?」
「うん多分……。」
空になったコップをテーブルに置く。
「多分て……。女の子にあんまり飲ませちゃだめだよ。」
「俺が飲ませたわけじゃないし。
ていうかなにそれクロがまた余計なこと言った?」
めんどくさそうに孤爪はため息をついて、ソファに再び横になった。
「研磨が最近モテてるって話は聞いた。」
「そんなの真に受けないでよ。あー、気持ち悪い……。」
「え。大丈夫?お水もう一回持ってくる。」
「いらない。」
早川がコップを手にして立ち上がろうとしたとき、孤爪がその手を掴んで止めた。
「研磨?」
「ナギ、これあげる。」
そう言って彼はポケットから何かを取り出して、彼女の手に握らせた。