第10章 夏風
海に遊びに行った日を境に、私は前にも増して矢吹くんに話しかけられることが増えていっていて、正直そんなに楽しくなかった学校生活が、段々と楽しくなっていくのを感じていた。
奈緒ちゃんがいなくても、矢吹くんとなら楽しく話すことができるようになって、前よりも距離が近づいたように感じていた私は、
夏休みが近づいてきたある日、
出せる限りの勇気を振り絞って、矢吹くんを、家の前の通りで毎年行われる夏祭りへと誘った。
すると矢吹くんは、向き合って立っていた体を反らし、後頭部を掻きながら、
「いいよ。/」
と、照れくさそうに返事をくれた。
友達やクラスメイトに遊びに誘われるのに慣れているからだろうか。
私みたいなあからさまな動揺は見せない。
さすがだ。
…今まで廉としか行ったことはないお祭りを、他の男子と待ち合わせする日がくるだなんて/
思ってもみなかった。/