第10章 夏風
廉side
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今思えば、この頃からめぐみが好きだったんだろうか…?
普段本ばっか読んでて、引っ込み思案で、手先は器用なクセに全然自分に自信がもてない、この文学少女を絵に描いたようなヤツを…。
惚れたりなんか、するワケねーと思ってた。
…妹みたく心配っつーか、ま、俺には妹は居ねーけど。
そういうヤツだって、思ってたのにな〜……。
なに、いまさら気づいて、笠松先輩に妬いてんだか。
【 お前、勉強以外でもバカなのかよ。】って、自分ツッコミしたくなるくらいだわ。
そんな事を考えていると、俺たちの方へ、人混みを掻き分けながら向かってくる笠松先輩の姿が見えた。
隣にいるめぐみは、祭りの人だかりのせいで、まだ笠松先輩に気づいていないようだ。
……どうする??
このままめぐみを連れて反対方向へ全力で走れば、なんとか振り切れるか?
イヤ!そもそもオレはなにを考えてるんだ。
笠松先輩は、オレがあんな話をした直後にもかかわらず、めぐみのもとへ走って来てくれたんだぞ?
メチャクチャ良い男じゃねーか。
それなのに、なんでオレは躊躇ってる???
めぐみへの気持ちは、気づかなかったオレのミスだ。
オレ自身のミスなんだ。
…もう、
「笠松先輩…?」
ほらな、
やっぱり遅すぎたんだよ。気付くのが……
ふと隣を見ると、笠松先輩を一心に見つめるめぐみの横顔が、そこにあった。
……オレは、試合する前に、負けちまったんだ。