第9章 初恋はウソの味
爽やかな短髪の黒髪に、くりんと大きな瞳。
身長も、160cmちょっとくらいかな…?
中1男子のなかではまあまあ高め。
3月までは東京に住んでたという矢吹くんは、小学校時代バスケ部のエースだったらしい。
甘いマスクとそれなりに鍛えられた体格と、みんなに優しく話しかけてくれるフレンドリーさから、たちまちクラスの人気者となった。
男子からも女子からも、矢吹くんの人気は絶大。
入学して約二週間が経過した今。
多分、彼はクラスで一番の人気者だと思う。
そんな彼は、何故か私に、よく話しかけてくれる。
入学式で会話して以来、ほぼ毎日と言っていいくらい、なにかしら私は、矢吹くんに話しかけられていた。
そんな私を助けてくれたのが、奈緒ちゃんだ。
奈緒ちゃんは、とにかく可愛い。
私との共通点と言えば、背が低いことくらいで、その他は私とは、天と地ほどもあるくらいかけ離れた存在の奈緒ちゃん。
女子からも、男子からも文字通り愛されている奈緒ちゃんは、人と話すのが苦手な私が、矢吹くんから話しかけられて戸惑っているのを、度々助けてくれている。
奈緒ちゃんが間に入ってくれることで、男の子と二人きりにならずに済むという安心感から、最近ようやく私は矢吹くんと普通に話せるようになってきた。
「三嶋はバスケ部入らねぇの?前田も辰巳も永井も入るってよ?…まぁ、俺も入るけどさ。三嶋もやろうぜ。」
「俺、中学ではサッカーやることにしたんだよ。国原と一緒に。」
「なんでだよ?エースだったんだろ?もったいねー」
「色々やりたいんだよ。俺は。」
すっかり廉とも仲良しで、
ハタから見ればまあまあルックスがよろしいらしい廉とともに、女子人気を既に二分しはじめている。
矢吹くん、廉、前田くん、辰巳くん、国原くんの5人は、いわばクラスの男子の中心的な存在で…
ムードメーカーの前田くんと辰巳くんは、お笑い担当。
スポーツ万能で女子人気が高い矢吹くんと廉は、ルックス担当。
冷静に4人をツッコむ国原くんは、ツッコミ担当。
的な感じだろうか…?
窓際、一番前の席を、既に特等席にしつつある私からしたら、彼らはそんな感じだ。