第1章 オレンジ
「先輩…一緒に帰りませんか…?先輩、裏門の方ですよね?」
「…う、うん。」
なんだろう。
笠松先輩の話をしたあと、体育館倉庫にふたりを案内し、無事オリエンテーションを済ませた私は、
親友の沙奈江さんと幼馴染みの廉以外のひとに、ともに下校しようと、
高校入学以来初めて誘われた。
もちろん、相手は、佐藤さんだ。
さっきまで田崎くんもいたんだけど、いつの間にか消えていた。
彼は私に似たタイプかもしれないな。
ひとり、ふらっと。
私も大好きだ。
新緑に葉が染まりつつあるものの、もはやこの時間帯では、辺りが暗くよく見えない。
日が落ちるのが遅くなってくれば、
生徒会は忙しくなってくる。
文化祭準備のため、各クラスや部活動との連携に、
定期試験だって。
その前に、生徒会自体の結束を深めるとしますかっ
「準備できた…?」
「はいっ」
自転車を押しながら、佐藤さんが歩き出そうとしたその時、
「なぁ!」
突然、背中越しに声をかけられた。