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誰よりも輝いて【黒バス 笠松 幸男】

第1章 オレンジ




『ガチャッ』


「どうぞ〜」


「さすが、海常の体育館は広いですねー」


メガネっ子の田崎くんが、さすが全国常連校とかなんか呟いている。


その感想は、海常高校に入学した誰もが一度は思うことで、


とくに人がいなくなった部活終了後のこの時間はだいたいみんなが思うことだった。


「部活はもう終わりの時間…ですよね…?」


「ん?そうだけど…?」


当たり前のことを繰り返す、身長154cmの私と同じくらい小柄な佐藤さん。


佐藤さんの視線の先を見ると、
何度も見かけたことのある、先輩の後ろ姿があった。


いまはひとり、シュート練習をしていた。


「あれは、バスケ部キャプテンの笠松先輩だよ。」


「へぇー、あれが噂のキャプテンか!」
「随分と小さいですね。」


ふたりからは思い思いの言葉が飛ぶ。


客観的に見ると、そうなんだろうなぁ…と思う。


見た目は、他のレギュラー陣より小柄で、
いつも眉間に皺が寄り、なんというか……


損していそうだと、入学したての頃は、よく思ったものだ。



けれど……




「あの人の凄いところは、そういう上辺じゃないよ。



…たぶん、もっと芯の部分だと思う。」




正直、私も、去年の夏までは、ただの【怖くて小柄なバスケ部の先輩】だと思ってた。


けど、違った。


あの人が厳しいのは、顔が険しくなってしまうのは、



本気だからだ。



バスケに、本気だからなんだと、うちの学校が夏の全国大会で敗退した日の翌朝、


体育館でひとり、泣きながら練習する背中を見て、




気がついた。
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