• テキストサイズ

誰よりも輝いて【黒バス 笠松 幸男】

第1章 オレンジ



高校生活も1年目が終わりを告げ、2年生になって2ヶ月目が終わろうとしている5月末日の放課後。

はやく帰りたい気持ちを抑えながら、
私は新たな生徒会のメンバーに、校内を案内していた。


…はやく帰りたい。
帰ってはやく、小説の続きを読みたい。


今月の中旬に発売された小説『オレンジ』は、
私の大好きな小説家の新作で、


バスケットに青春を捧げる青年達の物語が描かれている。


主人公の【修二】と、因縁のライバル【遊馬】との試合シーンを前に、昨日はお風呂の順番が回ってきて、
続きを読み進められなかった…。


はやく読みたい。


「あの〜……、先輩?」


「あっ、…なに?」


呼ばれて振り返ると、なんともいえぬ顔で、下級生が私を見ていた。


「まだ開きませんか?体育館の鍵…」


あっ、そうだった!


ふと手元を見ると、そこには施錠用の鍵があった。


本のことで頭がいっぱいになって、
自分が体育館の鍵を開けて、館内を案内しようとしていたことが、頭の隅に追いやられていたようだ。


まったく……。


本来なら、新1年生のオリエンテーションは、生徒会長が行なうものなのに……


「わりぃ!今日バイトなんだわ!清宮には変われねぇし……、1年のオリエンテーション頼む!!玉利!!」


会長は、2年の教室に駆け込んできて、
その言葉だけを残し、すぐに去っていった。


…そもそも、副会長の清宮先輩に変われないのは、お前の都合だろう。と言いたい。


要は、用事を無理やり押し付けて、清宮先輩のなかでの自分の株が下がるのがイヤなのだろう。


…だから私に押しつけたのだ。


生徒会書記の、私に。


/ 59ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp