第3章 夏の終わりに、咲く桜
笠松side
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それから俺は、ひとり、誰も居ない体育館で、壁に寄りかかりながら、丁寧にハンカチの包みを開けて、ラップに包まれたこしあんぱんを食べた。
いまどき、差し入れにあんぱんかよ…!
って、ツッコミたくもなったが、、
やたらと美味かったから、俺はあっという間に平らげてしまった。
生徒会の栗橋にでも聞いてみっか…。
そしたら誰かも、わかるだろう。
……わざわざ手作りのあんぱんと、手縫いの、しかも木綿のハンカチを、差し入れるほど古風なヤツは、そうそう居ないだろうしな。
きっと、すぐにわかるだろう。
「…栗橋に、返してもらうか。」
そう思った俺が、
後日、直接めぐみに渡すように、栗橋にハンカチを押し返されて、
いまも、俺の机の引き出しに、そのハンカチが、返せないまま眠っていることは、、
俺と栗橋だけの、ヒミツだ。