白い小悪魔は誰のもの?~secondseason~
第22章 ★火神の師匠★
高尾『真ちゃ~ん、何見てんの?あ、ひょっとしてあれ零蘭ちゃん?』
緑間『うるさい黙れ。そして奴を見るな』
緑間は高尾から零蘭を隠すように前に立ちはだかる。表情は零蘭を見る前に戻っていて明らかに不機嫌なことが目に見えた。
だが慣れている高尾は気にもせずにケラケラと笑って緑間を避け、観客席を見ようと体を傾ける
高尾『うっわひで~wwんな邪険にすんなよ。真ちゃんだけのじゃねぇだろ?』
緑間『お前だけのものでもない。いいから見るな、奪われるぞ』
高尾『奪われる..?真ちゃんってば、試合で疲れて変なこ...っ!!』
一瞬だった。観客席から零蘭を見つけ、また彼女も高尾を見つけ微笑む。
体全体に電流のような衝撃が走り、視線が釘付けになる。周りの音が途絶え、零蘭に惹き付けられ足が勝手に進もうとする。危険なクモの巣が目の前にあると分かっているのに、甘美な魅力に引き寄せられる哀れな獲物。
零蘭はクモの巣という戦略を使う花宮。その妹と名乗るだけあって、彼女自身も蜘蛛のような存在であった。
花宮が相手を罠に嵌め、じわじわと苦しみを与えて殺すという悪意に満ちた物ではなく、罠だとわかっていても自ら飛び込み、麻薬のように一度触れれば引き返せず、落ちれば偽りない愛を与え満たしていく。善でも悪でもない蜘蛛。
高尾『零蘭...ちゃん...』
届くはずないと分かっているのに手を伸ばしたくなる、その力に抗えずに手を伸ばそうとした
緑間『お....高尾!』
高尾『っ、なに....真、ちゃん?』
緑間の声で手を伸ばしかけていた高尾はハッと我に返る。気がつけば思った以上に足が進んでいた事に驚いた
緑間『だから言っただろう...見るなと。今の零蘭は俺達には毒だ。昔からたまに見せるが付き合いの長い俺でも危うい。行くぞ』
二人は先に行ったチームを追いかけるように急いで鞄を担ぎ、コートを後にした
高尾『あっぶねぇ~。マジで走ってくとこだったわ。零蘭ちゃん何者!?』
緑間『小悪魔だ...しかもとびきり質の悪い、な』
高尾『言ってる割には真ちゃん、顔にやけてるぜ...?』
緑間『ふん、放っておけ』