第9章 ラッキーアイテム
黄瀬は、力の抜けた身体を壁にそっと押しつけると、服の上から舐めるように手を這わせた。
「ゃ、駄目……っ」
「……結、静かに」
「ん、ん」
甘噛みした耳の奥に吐息を吹きこんで、抗う気力を完全に奪う。
首筋を愛撫する唇は止まること知らず、アトが残るのも構わずに白い肌に何度も吸いつきながら、黄瀬は上衣の裾からスルリと手を潜りこませた。
「ひゃ……っ!」
「なんかさ、スリルがあって……逆に燃えないっスか?」
「何言って……ん、あ、ぁっ」
脇腹や背中をなぞるたび、小さな口の隙間からこぼれる喘ぎにゾクゾクする。
「ハハ、エロい声……抑えなきゃ聞こえちゃうよ」
「ん――……っ」
必死で声を噛み殺す姿を見て、完全に主導権を握ったことを確信しながら、黄瀬は結の耳のカタチをなぞるように舌を這わせた。
それは恋人の弱点のひとつ。
「結はさ、耳が弱いんスよ……知ってた?」
「あ……ン、んっ」
「いいの?そんな声出して」
耳朶をもてあそぶ舌の熱と、素肌を執拗にまさぐる手に、結はガクガクと膝を揺らした。
「……カワイ」
ふらつく身体を支えながら、背中をもぞもぞと這う指先が、探り当てたホックを器用に外す。
「ん、ちょっ、何して……」
「なんか、止まんなくなったかも」
解放された膨らみを、黄瀬はじわりと汗ばむ手のひらでつつみこんだ。
吸いつくような肌に誘われるまま、カタチを変えるほど揉んでやると、硬さを持ち始める胸の先端に、自然と呼吸は荒くなっていく。
「ハッ、もうこんな尖って……感じちゃった?」
「違……っ、や、あん」
いっそこのまま──黄瀬がそんなことを思った時だった。