第7章 リミッター
服を床に散らしながら、ベッドまでの短い距離をたどる長い足。
質のいいスプリングはギシリと音も立てず、ふたりの一糸纏わぬ姿を受け入れた。
「……結」
すでに勃ちあがった下半身がズキズキと痛む。
一気に貫いて本能のまま突いたら、どれほど気持ちがいいだろう。
(メチャクチャにしたい……けど)
黄瀬は、暴れそうになる欲望に言い聞かせるよう小さく息を吐いた。
「ちゃんと……慣らさなきゃ、ね」
見られることにまだ抵抗がある彼女のために、照明は落としたまま。
フットライトだけが唯一の明かりの薄暗い部屋の中、黄瀬は自分の指をペロリと舐めた。
浅い場所を丁寧にほぐしながら、黄瀬は慎重に指を押しこんでいった。
「すげぇ、トロトロ」
「や……ぁ、んっ」
まだ数えるほどしか身体を重ねたことはなかったが、彼女のイイ場所は把握済み。
うねる粘膜を掻き分けながら奥を目指す指先が、敏感なポイントにたどり着くまでにそれほど時間はかからなかった。
(確か、ここらへん)
「ひ、ゃあっ!」
「……正解」
何度か引っ掻いてやると、イヤイヤと頭を振りながら肩に爪を立てる細い指が、力なく肌をすべる。
「ゃ……ん、駄目、ダメ」
「いいよ。このままイッて」
自分の快感よりも、彼女を悦ばせることがこんなにも嬉しいなんて。
だが、嬌声を上げ、絶頂に震えるカラダを前に、我慢も限界に近い。
「そろそろ、挿れてい?」
「っ」
痙攣する襞から指を引き抜き、太股に屹立を擦りつけると、ビクンと弾ける腰に、黄瀬は乾いた唇を噛んだ。
心の準備も出来ないまま、男の欲にまかせて抱くようなことはしたくない。
「まだ無理そ?なら、オレ……」
眉を寄せ、劣情に耐えようとした黄瀬は、両頬に触れてくる小さな手に、暗闇の中で目を見開いた。
「……涼太」
「っ」
名前を呼ばれただけで呼吸が止まる
掻きむしりたくなるほど胸が苦しい
「結……」
こんな感情を教えてくれたのは、後にも先にも彼女だけ。
好きすぎて、どうにかなってしまいそうだ。
「早く、キテ……」
「そんな台詞、何処で覚えたんスか。ったく、どうなっても知らないっスよ」
痺れるような悦びでノドを震わせながら、避妊具の袋を噛み切り、装着を終えると、黄瀬はゆっくりと腰を沈めた。