第7章 リミッター
頑固な持ち主に反し、手の中で従順にカタチを変える乳房を揉みしだきながら、黄瀬の執拗な愛撫は続いた。
後で彼女が困ると分かっていながら、あらわになった首筋に吸いつき、歯を立て、口内に含んだ耳朶を噛む。
「ん」と漏れる声に、分かりやすく質量を増す下半身に心の名で苦笑いしながら、耳の穴に差しこんだ舌でねっとりと蹂躙を開始。
粘膜質な音がオトコの欲をさらに煽るのは必至だ。
「ゃ、ん、そこダメ……お願、い」
震える声で懇願されて、黄瀬は唾液にまみれた耳朶を名残惜しそうに解放した。
「ハ、仕方ないっスね」
耳が弱いのは承知の上。
黄瀬は、濡れた自分の唇を舐めると、壁にクタリと身体を預ける恋人の乱れた姿に視線を落とした。
うっすらと歯形が浮き上がる白い肌。
無数の赤いシルシを刻んで、オトコを誘うように揺れるふたつの膨らみ。
その中心でひっそりと勃ちあがる胸の飾りを、黄瀬は指先でピンと弾いた。
「ひゃ、っ」
「真っ赤に腫れちゃって」
吸われて、舐められて、散々いじられた先端が、さらに存在を主張するようにぷくりと膨らむ。
苦情を言う気力もないのか、「誰のせいだと」と恨めしい視線を送る潤んだ瞳がたまらなく愛おしい。
「暑、っ……」
ずっと燻っていた熱が全身を焦がす。
額に浮かぶ汗を拭うように前髪を掻きあげたその時、糸が切れたように胸に倒れこんでくる身体を、黄瀬は両腕で受け止めた。
「結、どうし」
「好き……大好き」
細い腕が、遠慮がちに首に巻きつく。
吐息をこぼし、胸に縋りついてくる恋人を、黄瀬は驚きと喜びに目を丸くしながら、強く、そして優しく抱きしめた。
会いたい
抱きしめたい
日々募る気持ちは一方通行ではなかったのだ。
「もっと言って。もっと……聞かせて」
「……すき、好き」
耳許で囁かれる甘い言葉は、まるで媚薬。
「結……オレも、スキ」
深く繋がりたい
貪欲な感情が心を支配する。
ふたりは抱き合っていた身体をゆっくりと離して、お互いを熱く見つめ合った。
「ね。ベッド行こっか?」
「……う、ん」
消え入りそうな返事をして、潤んだ瞳をそっと伏せる恋人に理性が弾けとぶ。
「それ、マジで反則だから」
額に、頬に、唇に
顔中にキスを降らせながら、黄瀬はその身体を軽々と抱き上げた。