第7章 リミッター
カードキーを差し込む時間すら惜しむように唇を重ねながら、ふたりは縺れるように部屋に転がりこんだ。
重厚な雰囲気で統一された贅沢な空間が特徴の、都内でも名の知れたホテルの一室。
「結、会いたかった……」
「ん……私、も」
あと数歩進めば、やわらかなスプリングのベッドが迎えてくれることは明らかなのに。
扉が閉じる前に抱き合ったふたりの熱は、もう一秒も待てないとばかりに、その場で燃え上がった。
乱暴にカバンを床に落とし、壁に追いつめる余裕のない腕と、頬をなぶる飢えた声。
歓喜にのどを震わせながら、結は黄瀬に縋りついた。
「黄、瀬……さ」
「まだ、結が全然足りない。もっと……もっとちょーだい」
少し乱暴に手首を壁に拘束され、ゆっくりと顔をあげれば、上から見下ろしてくる金の瞳に灯る炎がゆらりと揺れる。
獰猛な色を隠そうともしないそれに、結は降参の溜め息をこぼした。
「その顔……ズルい」
「ハ、嫌い?」
ゾッとするほど妖艶で、自信ありげな微笑みに、胸の奥が甘く痛む。
「そんな訳ないって、知ってるくせに……」
「ホント素直じゃないんだから。そんなとこも可愛いけど」
プイと横を向いた唇を追い掛けるようにフワリと重なる唇が、より深いつながりを求めてその角度を何度も変える。
結は薄く唇を開けて、その願いを受け入れた。
「ん、っ」
「……結」
息が出来ないほど濃厚なキスに溺れ、もっとと欲してしまう本能を抑えることは出来なかった。
「ん、は……ぁ」
「……も、たまんない」
飲み込みきれず、口の端からあふれて喉を伝う唾液をたどる舌に肌を焼かれながら、もどかしげに服を乱す手に、結は身をゆだねた。