第5章 モデル
「今日は、おとなしくオレに抱かれて」
耳許で囁かれる熱い吐息に、背筋がゾクゾクと震える。
「んっ」
ゆっくりと重なる唇を、結は目を閉じて受け入れた。
さっきとは比較にならないほど密に絡み合う唇に、あっという間に息があがる。
角度を変える度に深くなるキスに、理性は跡形もなく溶け落ちていった。
「ぅ、ん……黄瀬さ……っ、すき」
「ウン。オレも、スゲー好き」
口をうすく開いて、差し出した舌を黄瀬にキツく吸い上げられて、結は歓喜の声をあげながら背中を反らせた。
「ん……ぁっ」
「ハッ、ホント……たまんない」
乱れた服の隙間から潜りこむ熱い手が、無防備な肌を暴くように蠢く。
その間も黄瀬の愛撫は絶え間なく続いた。
「ふ、ぁあっ……ん」
「その声、ヤバいって」
制服の上着をもどかしげに脱ぎ捨てると、黄瀬は首からネクタイをしゅるりと抜き取った。
(わ……カッコ、いい)
その艶めいた仕草に、結は乱れた息を一瞬止めて、極上の恋人に思わず見惚れた。
視線に気づき、うっすらと目を細める金の瞳と、唇を舐める赤い舌に、身体の奥から湧きあがる感情を何と呼べばいいのだろう。
「ね、オレが欲しい?」
「……っ」
「たまには、結の方から求めて欲しいんスけど」
切なげに伏せられた長い睫毛が、何かを欲するようにかすかに震える。
なんて扇情的な景色だろう。
「言って、オレが欲しいって」
制服のシャツのボタンをひとつずつ外していく長い指と、惜しげもなく晒されるたくましい上半身に、結はヒュッと息を飲んだ。
(……欲しい、彼が)
のろのろと伸ばした腕で、黄瀬の頬に触れた指先がピリと痺れる。
「ん、っ」
正常な判断も、発する言葉も奪われて、擦りあわせた膝だけが淡い期待に揺れる。
結は、答えを待つ恋人の髪に指を絡めると、自分の胸にそっと抱き寄せた。
それは今の彼女に出来る精一杯の答え。
「ハッ。仕方ないっスね」
どこか嬉しそうな声に胸をなぞられて、肌が粟立つ。
「そのかわり、たくさん結を貰うから……覚悟はいいっスか?」
宣言通り、繰り返される波に溺れながら、結は乱れるシーツの上で何度も高みにのぼりつめた。