第54章 エンドレス
尖らせた舌先で唇の隙間をくすぐると、熱い吐息をこぼしながらもこれ以上の侵入を拒もうとする小さな口に、黄瀬は深くくちづけた。
胸に手をついて離れようとする結の後頭部を抱えこみ、腰に回した腕で逃がすつもりはないのだと教えると、口内にねじ込んだ舌で上顎を舐め、縮こまる舌を絡めとる。
「ふ、ぁ……ん」
「ごめ……やっぱ、ちょっとじゃ我慢……出来ないかも」
「ん、ンっ」
波を起こすようにジャージをかきむしっていた手が、観念したように胸をなぞり、首にゆっくりと絡みつく。
「ハ、気持ちい?」
チュッと音を立てながら顔中に降るキスに、悔しそうに見上げてくる瞳に、黄瀬はふわりと微笑んだ。
「……こんなの、ズルい」
「オレをこんな気持ちにさせる結が悪いんスよ」
黄瀬は抱擁を解かないまま、気配だけで後ろの座席に腰を下ろすと、力の抜けた身体を足の間に引きこんだ。
「……も、行かなきゃ」
「そんなエロい顔したまま、皆のとこ戻れんの?」
「そ、そんなこと……っ」
「キスだけで感じちゃった?」
「ム」
尖らせた唇の破壊力がどれほどのものなのか、彼女に教えるつもりはない。
もっとも、こんな顔をさせられるのは自分だけだという自負があるからこその話だが。
トロけた瞳を隠すように伏せられた瞼に、何度も唇を落としながら、コートの下に潜りこませた指先でなぞった背中がビクンと跳ねる。
「や、あ……っ」
「あぁ、その声ホントたまんねぇ」
「ん、駄目……っ、黄瀬さ」
「だから──」
名前で呼べよと低く囁いて、ふたたび塞いだ唇が何かを訴えるようにはくはくと動く。
それは、さらに濃度を増すキスへの抗議の声か、それとも。
「ンっ、りょ……う、んぁ」
「ハッ……その可愛い声、もっと聞かせて。オレの……オレだけの」
このまま誰もいない場所に連れ去って、閉じ込めてしまいたい
「もっと呼んで、オレのこと。好きって言って……もっと」
「ん、涼……太ぁ、好き」
独占欲という名の狂おしい劣情を、この身体に刻みつけた責任は取ってもらうつもりだ。
一生をかけて