第53章 ファイナル
「ハ、ハイっ!!」
青峰から信頼という名の最高のパスを受け取ったのは、今吉に『特攻隊長』と言わしめた優秀なシューターであり、弱気な性格ながらも桐皇を一年間率いてきた桜井良。
海常ベンチから悲鳴が上がる。
「カウンターだっ!戻れ戻れっ!!」
「止めろっ!!黄瀬ーーっ!!」
拳を振り上げる武内の怒号が耳に届くよりも早く、いや、青峰がリバウンドに飛んだ瞬間、黄瀬はコートを走り出していた。
全身が悲鳴をあげる。
ヒリついた喉が呼吸を拒絶し、足の筋肉が鈍い音を立てて切れていく痛みが、身体の内側から感覚を奪っていく。
だが、どんなことがあっても、絶対に最後まで諦めない。
思い出せ
こんな自分をエースとして信頼し、導いてくれた先輩達の背中を
後を頼むと肩に置かれた手の震えを
ともに汗を流し、喜びも悲しみも分け合ってきた仲間達を
そして
どんな時でも寄り添い、支えてくれた彼女の手を
たとえこの足が折れようとも、身体がバラバラになろうとも、諦めるわけにはいかない。
「止めてみせるっ!!オレのすべてを賭けてっ!!」
酸素不足で今にも止まりそうな心臓が、観客席から響くたったひとつの声に反応してドクンと脈打つ。
「涼太あぁぁーーーーっ!!」
嗚呼
この声は
オレの
オレ達の勝利の女神の声
結
一緒に見よう
頂上からの景色を──
文字通り最後の力をふりしぼって、宙に舞った海常の守護神は、両腕を大きく広げると、シュート体勢に入った桜井の前に巨大な壁となって立ちはだかった。