第51章 キスミー
呼吸すら忘れて魅入ってしまうトロけた瞳と、鼓膜を震わせる甘美な誘惑の声が、胸の奥に突き刺さる
「欲しい……?オレが」
もっと求めて
狂おしいほどに
だが、返事に窮してそっぽを向く姿は、さっきまで喉を鳴らしていたくせに急に態度を変えるネコのよう。
「ハハ。素直なんだか頑固なんだか」
苦笑いしながら強く吸いあげたのは、前に彼女につけられたキスマークと同じ場所。
「や、跡つけちゃ駄目……っ」
「ナニ言ってんの。こないだオレが寝てる間につけたっしょ?着替えの時、大変だったんスよ」
「あ、あれは……お返しデス。私だって大変だったんですからね」
「じゃ、コレはお返しのお返しってことで」
たっぷり利子をつけてあげるっス、と繋いだ手をシーツに押さえ込むと、黄瀬は柔肌に唇を落とした。
浮き上がる鎖骨をたどり、優しく自分だけの痕跡を残しながら首筋に舌を這わせ、「も、動くよ」と開始した律動に、嬌声で応える恋人の指に指を絡ませる。
乱れた髪を鼻先でかき分けて、聴覚をも犯すように耳に舌をねじ込めば、抽迭に合わせて揺れる腰が、黄瀬にさらなる快感をもたらしていく。
「ハ、ァ……結、気持ち、い?」
「や……ぁ、耳で……喋らない、で」
「カワイ……もっと、グチャグチャにしたい。乱れてよ、もっとオレで」
上体をじわりと起こし、黄瀬は引き上げた結の身体を足の上に座らせると、繋がったまま腰を大きく揺らした。
「んん、ゃあ……っ!」
「ハ……ッ、イイ声」
揺さぶり、揺さぶられ、いつしかどちらが主導権を持っているのか分からなくなるほどに乱れ舞うふたつの身体。
「奥に届いてんの、分かる?」
「っ、ン……そこ、深い、っ」
下から激しく腰を突き上げながら、ゆらゆらと揺れる胸を揉みしだく。
やわらかさの中で硬さを強調する先端を指で捏ねると、トロける襞が黄瀬の昂りをきゅうきゅうと締め上げた。
「ン……ココ弄ると、キュッと締まって……噛みついてくる、っ」
「あ、ぁっ、ん」
「感じてる顔、見せて……もっと」
「それダメ、りょ……太、っ……ああぁ、っ」
髪を乱し、喉をのけ反らせて翔ぶ瞬間を目に焼きつけながら、黄瀬はうすい膜の中に欲望を吐き出した。