第51章 キスミー
結が、あまりこの行為を好きではないことは知っていた。
それが嫌悪感ではなく、羞恥心からだということも。
(でも……)
「ふ、ぅん……っ」
いつもなら、身体を捩ってわずかな抵抗をみせる彼女が、今日はその愛撫に応えようとしていることが愛しくてたまらない。
オトコを誘うように勃ち上がる花芯を指で弾くと、豊潤な蜜をたたえて咲きみだれる花びらの奥へ、黄瀬は舌をゆっくりとねじ込んだ。
「ン、はあぁ……ぁっ!」
背中の上でビクビクと跳ねる足に興奮度は増すばかり。
唇を強く押しつけながら、無意識に侵入を拒む襞の奥へと舌を伸ばすと、「や、待っ……て」と行為を制止する細い指が金の髪を掻きむしる。
黄瀬は顔をうずめたまま、視線だけを上に向けると、結の表情を覗きみた。
「それ……恥ずか、し」と乱れる息の下で懇願する声に、黄瀬はいったん舌を引き抜くと、ぐっしょりと濡れた口元を手の甲で拭った。
乱暴に責め立てたあの夜のことは、まだ記憶に鮮明に残っている。
足の付け根にキスを落とすと「結がイヤならもうしないから」と震える指にそっと触れる。
「い、嫌……とかじゃなくて」
「ん?」
「わ、私……だけ、気持ちいいのは」
そうつぶやいて途切れてしまった言葉の意味を、真っ白になった頭の中で必死で繋ぎ合わせるが、その答えはひとつしかなく。
「それって……オレのも、シてくれる……ってこと?」
無言で顔を背ける、ふたりだけに分かる肯定の合図に、黄瀬は生唾を飲み込んだ。
オトコにとってそれは、まさに夢のような誘惑。
断る理由はない。
「じゃあ横、向ける?そう……そのまま」
「ん」
素直に体勢を変える身体が、シーツにとさりと沈みこむ。
黄瀬は、横向きになった結の頭側に足を向けると、身長差を埋めるように身体を丸めた。
「これで届く?」
「……は、い」
既に痛いほど張りつめた昂りが、おずおずと触れてくる手に反応して激しく脈打つ。
「だいじょぶ?無理、してない?」
「涼太にも……その、気持ちよくなって欲しい、だけだから無理、なんて」
両手で包まれるその快感と歓喜に背筋が震える。
「ヤバ……興奮、する」
黄瀬は、目の前で擦りあう足をゆっくりとほどくと、匂い立つ香りに導かれるまま、顔を深くうずめた。