第51章 キスミー
『恋人が喜ぶクリスマスプレゼント特集』
キョロキョロと辺りを見回し、結は平積みされている雑誌を手に取った。
ハラリと開いたページをきらびやかに飾るのは、有名ブランドらしきアクセサリーや、見るからに高級そうな時計とカバン。
そのどれもが、目を剥くような数字を従えている。
(完全に選ぶ本を間違えた……)
こんな高額なプレゼントを贈ることは無理だし、逆に贈られても困る。
本当に欲しいのは──
溜め息とともにページを閉じ、本を元に戻したその時。
「おねーさん、ひとり?」
背後から、ふわりと視界をさえぎる大きな手と、無機質な空気を一瞬で染める、彼愛用の香水。
結は表情筋を引き締めながら、幸せの香りを胸いっぱいに吸いこんだ。
「よかったらお茶でもどうっスか?」
「昔ながらの誘い文句ですね。古典、得意でしたっけ?」
「ハハ、そう来たか。手強いっスね」
二週間ぶりの声に、肩を抱く腕の温もりに、心が震える。
楽しげな気配に背中を預けると、結は普段なら払いのけてしまう腕におずおずと触れた。