第4章 スウィートハニー
「ハハ。バカだな、オレ」
黄瀬は、拍子抜けしたように小さく笑うと、ゆっくりと抱擁を解いて、さらに赤く染まる頬を両手でつつみこんだ。
「不安にさせてゴメン。ちゃんと言えば良かったんスね、結が欲しいって」
「……黄瀬さん」
「じゃあ、もう我慢しなくていいってこと……だよね?」
目の前にある熱を湛えた瞳に、結は返事をすることも忘れて、ドキドキと騒ぎ出す胸を押さえた。
「が、まん……?」
「そ。ずっと我慢してたんスよ」
だから口、開けて?と唇をなぞる親指に心拍数が一気に上がる。
「そんな、の……無、理」
「ダ〜メ。いいコだから言うこと聞いて」
お仕置きのように唇をペロリと舐められて、今にも心臓が口から飛び出してしまいそうだ。
「ん、っ」
「舌……出して」
吐息がかかるほど間近に迫る強引な瞳は、さっき優しく抱きしめてくれた人のものとは思えないほど、欲に濡れていて。
(でも、どっちも……こんなに好き)
ギュッと目を閉じると、ゆるく重なる唇が待ちきれないとばかりに下唇に噛みついてくる。
「結。ほら」
口の隙間からおずおずと出した舌先を、熱い吐息ともに鋭い歯に捕獲され、思わず声が漏れる。
「ひ、ぁっ」
「そんな声出して……煽ってんの?」
黄瀬は苦しげにつぶやきながら、柔らかな唇に喰らいついた。
「ん、っン」
いきなり深いキスを仕掛けてくる唇と、すべてを食い尽くすかのような濃厚なくちづけに、結は全身をピクピクと痙攣させた。
「やっぱ、甘い」
隙間から侵入した舌が、ぐるりと口内を一周した後、奥で縮こまる舌を見つけ出してキツく吸いあげる。
結は、真っ白になる意識の中で、その舌に必死で応えた。
「ん、ふ……あっ」
「オレ、も、止めらんない……」
「ぁ、やっ」
サラサラの金髪と熱い吐息が肌を滑るたび、火傷してしまいそうだ。
「抱きたい……好き、結」
その囁きは、敏感な場所をくすぐりながらジワジワと身体の奥に熱を灯す。
「私も……す、き。大好き」
「そんなこと言われたら……も、限界だって」
軽い身体を抱き上げてベッドに沈めると、黄瀬はもう一秒も待てないとばかりに、やわらかな身体に覆い被さった。