第37章 ホーム
「タイガにこの写真、送りつけるか。泣くかもな、アイツ」
「それ、俺にも送ってくれないか?待受に……」
満面の笑みで、携帯を操作するアレックスの手元を覗き込む木吉の顔は、試合に臨むように真剣で。
「──木吉さん」
「……い、いや、何でもない」
だが、黒いオーラがジワジワと忍び寄る気配に、木吉はあっさりとその言葉を引っ込めた。
「──アレックスさん」
その硬質な声に、今度はアレックスが凍りつく。
「わ、分かった分かった。誰にも見せないって約束するから、そんな怖い目で睨まないでくれよ。可愛い顔が台無しじゃないか」
「おいおい。俺の恋人を真顔で口説くのはやめてくれないか」
「Oh!鉄平は意外とヤキモチ妬きなんだな。結、こんな器の小さい男はやめて、女同士仲良くしよう」
「だからアレックス。そのすぐキスする癖、いい加減直してくれ」
小さな身体を真ん中に挟んで、とぼけた攻防戦を繰り返す木吉とアレックス。
そんなふたりに押し潰されそうになりながらも、背中にさりげなく回された腕の温もりに、結はそっと寄り添った。