第3章 ロングバージョン
「足、ひらいて」と耳殻を齧られて、さらに強張る身体がベッドの上で小さく跳ねる。
「大丈夫、ゆっくりするから。痛かったり怖かったりしたら、ちゃんと教えて」
ね?と額に落ちてくる唇から伝わるかすかな震えに、結はうすく目を開いた。
「黄瀬、さん?」
「やっぱ名前、呼んでくれないんスね」
薄暗い部屋に響くその声が、寂しげに鼓膜を揺らした。
彼ほどの男性に女性との経験がないとは考えにくい。
そんな変えようもない過去を想像し、チクリと痛む胸に、結はたくましい腕を掴む手に力を込めた。
「結、だいじょぶ?」
「ん、ごめんな、さい……私」
「謝んないで。オレの方こそゴメン。でも、早く欲しい。もっと触らせて、結……結、好き」
何度も落ちる優しいキスに心が溶ける。
目を閉じてその唇を受け止めながら、結は黄瀬の頭をそっと抱きしめた。
「私もス、キ。りょ……涼、太」
頬をすべっていた唇が一瞬止まり、その後大きく吐き出された吐息が、結の前髪を甘く揺らした。
「オレも、好き。スゲェ好き……もっと呼んで、オレの名前」
「涼、太。りょ……たぁ」
少しゆるんだ足の隙間に手を滑りこませ、指先で触れた下着の中心はしっとりと濡れていた。
「も、濡れてる」
「ハ……ぁ、ん」
「恥ずかし?」
声を出せないまま、コクコクと頷く結の反応を窺いながら、黄瀬は指で器用に下着を脱がせた。
「もうちょっとだけ、足ひらける?」
「……ん」
「いいコ」
誰も触れたことのない無垢な花を摘む罪悪感は、それを上回る欲情と歓喜に上書きされて。
あふれる蜜を指に絡めながら、黄瀬は舐めるような愛撫を繰り返した。
「や、あ……ぁっ」
「オレで感じてくれたんスか?スゲェ嬉し」
指先の動きを止めることなく、もう片方の手で胸をゆるゆると揉みながら、完全に勃ちあがった尖りを口に含む。
敏感な場所を同時に責められて、全身を震わせる結の爪先が、シーツに荒い波を立てる。
「ひ、涼太ぁ、や、あ……っ」
「ハッ、ん、結……っ」
お互いの名を呼ぶ唇が深く絡まり合う。
背中にしがみつく腕に愛しさを噛みしめながら、黄瀬は震える舌を吸いあげた。