第3章 ロングバージョン
鼓膜の奥で反響する切ない声に、結は目を見開いた。
「なま、え……?」
「そう。オレの名前……呼んで?」
手の拘束をほどいた指先に、やわやわと下唇をなぞられて、肌がざわりと粟立つ。
「ホラ、言ってみて。簡単でしょ」
「黄瀬……涼、太?」
「ハハ。なんでフルネーム」
でも、ちょっと嬉し……と深く重なる唇が、理性を焦がすように絡み合う。
「ん、んっ……ぁ」
喰らい尽くすような激しいキスに、酸素不足で喘ぐ呼吸すら飲み込まれて、頭がクラクラする。
徐々に奪われる思考の下、いつの間にか取り去られた下着からこぼれる膨らみに触れてくる大きな手に、結は思わず身を捩った。
「ん、ん」
「やわらか……」
「や、ぁん」
最初こそ戸惑いがちだった手は、次第に緩急をつけ始め、その柔らかさを堪能するように大胆になっていく。
同時に与えられるのは、ゆっくりと、だが柔肌を食む熱い唇。
ゾクリと全身を走る甘い痺れに耐えかねて、結は胸を蠢く黄瀬の髪を掻きむしった。
「はぁっ、ンん……あっ」
「その声、たまんない」
「ん、ン……っ」
「ダメ、我慢しないで。もっと聞かせて」
「ふ、ぅ、ああぁっ!」
声を押し殺していることに気付いた黄瀬に、胸の先端をちうと吸われて、口からこぼれるのは自分でも聞いたことのない淫らな声。
(な、何……これ、ホントに私の声?)
「ん……カワイ。結、もっとその声聞かせて」
「ゃだっ、あ、ぁっ……あああぁ、ん」
カタチを変えるほど胸をまさぐる指が、肌に柔らかく食い込んで、いままで感じたことのない快感を生み出していく。
口の中に含まれたかと思うと、ねっとりと舐めまわす舌の熱に呼応するように、硬さを増していく先端がピリリと痛む。
「ンむ……ココ、もう固くなって……敏感なんスね。気持ちい?」
「っん、ああっ、ぁ」
尖らせた舌先で何度も弾かれて、下腹の奥に湧き上がる不思議な感覚に、結は腰をゆらゆらと揺らした。
「こっちも……触って欲しそうっスね」
急に声色を変えた黄瀬の吐息が、胸の膨らみをふわりとなぞる。
「あ、っん」
腰の括れをたどる指先の冷たさと、足の付け根に滑り込もうとするその気配に、結は全身を強張らせた。